あなたを苦しめる3つの有害な人間関係パターン～依存症の専門家松本俊彦先生の書籍から

日頃から暴力の問題について話すことが多いため、支配的な関係性に焦点を当てることが多いですが、実はそれ以外にも「モヤモヤする関係性」があると考えていました。

「中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド (こころの科学増刊) ムック」松本 俊彦,岩室 紳也 ,古川 潤哉編著（日本評論社）を読んだとき、この「モヤモヤする関係性」について明確に整理されていて目から鱗が落ちる思いでした。皆さんが人間関係をチェックするときに役立つのではと思い、ご紹介させていただきます。

1. 否定される関係性

自分が自分でいることを認めてもらえない関係です。「あなたはダメだ」「もっと努力すべき」というようなメッセージを常に受け取り、自分の存在を否定されるような関係性です。このような関係は自己肯定感を低下させ、自分自身を傷つける行動につながることがあります。

具体例： 家族の中で「他の子と比べてなぜあなたはこれができないの？」と常に比較される。面と向かって否定してくるわけではなく、陰口だったり、誰かを介して言ってくる。「あなたのために言ってる」と言いながら、実は否定的なメッセージを繰り返している。

2. 支配される関係性

支配的な関係では、相手が優位に立ち、あなたを束縛しようとします。あなたの行動、服装、交友関係などをコントロールしようとする関係性です。「愛しているから」という名目で束縛することもあります。このような関係は自分の自由や意思決定権を奪われ、自分らしく生きることができなくなります。

具体例： 恋人関係で「心配だから」と言って常に居場所を確認されたり、友人との外出を制限される。メッセージの返信が遅れると不機嫌になったり、怒りをあらわにされる。親子関係で「あなたのため」と言いながら進路を決められてしまったり、趣味や交友関係に過剰に干渉される。最初は「気にかけてくれている」と感じても、次第に息苦しさを感じるパターン。

3. 本当のことを言えない関係性

この関係性では、自分の本音や気持ちを正直に伝えられません。相手に嫌われるのを恐れて、自分の意見や感情を抑え込んでしまいます。結果的に、自分自身を見失うことにつながります。

具体例： 友人グループの中で「この意見に反対すると仲間外れにされるかも」と思い、本当は違和感があっても同調してしまう。職場で上司の要求に対して「断ると評価が下がる」と恐れて、体調不良でも「大丈夫です」と答えてしまう。

嫌われたくない、憧れている、好かれたい、という思いから、多少見栄を張ったりカッコつけたりすることは誰でもあると思います。でも、自分の感情や意見を抑圧するほどになるといびつな関係性になってしまいます。

個人的な考えですが、この3つは相関していて、１や３がいつの間にか2になっていた、みたいなこともあると思います。2には1と3が含まれることが多いと思います。

松本俊彦先生からのメッセージ

松本先生は書籍内で以下のようなメッセージを伝えています：

• 「居場所を作ることが大事」と言われるけど、その前に、まず問題のある関係性から逃げることが大切

• あなたにダメ出しばかりする人、支配・束縛する人、あなたを不正直にさせる人から距離を取ること

• 逃げられない状況もあるし、我慢するしかないかもしれない。それでも、少なくともその関係性のタイプを自覚することが大切

• そうすることで、物理的に逃げられなくても、心理的には距離を取ることができる

• 「保証しましょう。安心できるつながりは簡単に手に入るものではありませんが、気長にそれを思い続けた人の元には必ずやってくるものなのです。」

  
  

なんだかモヤモヤするなと思う人間関係があるとき、これらに当てはめてみると少し整理されるかもしれません。私も「支配されているとは思わないけど、なんだかあの人はモヤモヤする・・・」と思った時、１だなと思ったり、自分で3にしてしまっていると気付いたりしたことがありました。

この本は元々依存症の専門家である松本俊彦先生たちが編集に関わった中高生向けの本です。居場所がないと感じていたり、社会での性の語られ方に違和感を感じていたり、生きづらさを抱える若者たちに向けた優しいメッセージに満ちています。今回ご紹介したメッセージも素晴らしいと思い、私以外にも救われる人がいるのではないかなと思ってご紹介しました。

こんなふうに人間関係を見直したり、自分のコミュニケーションについて考える自助グループ、心のケア講座を行っています。ぜひご参加お待ちしています😊