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トラウマケアとは?具体的な方法とステップ

執筆者の写真: kumada riekumada rie

 ACOA大阪こころのケア講座最終回は「トラウマケア」でした。トラウマケアとは何をするのか、漠然としていることも多いと思います。カウンセリングで過去のつらい記憶を話すことは知っていても、それがどういう意味を持ち、この生きづらさの改善にどう役立つのか、わからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 今回は、非常に簡単にではありますが、トラウマケアとは何をするものなのかについてお伝えしたいと思います。


 まず、人それぞれ性格や気質、経験してきた人生、そして脳や神経のあり方は異なります。このため、トラウマのあり方も人それぞれです。したがって、一つの方法ですべてのトラウマを解決することは難しいとされています。そのため、多くの心理療法やケアの方法が試みられてきました。以前は合わなかったケアが、今はしっくりくるということもありますので、ケアやアプローチ、タイミングはそれぞれで異なります。

 

 ここでは、多くのケアに共通しているとされる内容をいくつかご紹介いたします。


●記憶の整理

信頼できる相手(支援者、カウンセラー、自助グループ)に過去の記憶を語ります。痛みを伴う場合もありますが、「今、ここ」にいられるようなサポートを受けながらつらい過去と向き合っていきます。


●感情のケア

記憶に伴う感情をケアします。恐怖、不安、羞恥心、孤独感、無力感、嫉妬、恨み、苦しみ、悲しみ、寂しさ、後悔、絶望、罪悪感、イライラなど、トラウマにはさまざまな感情が伴います。押し込められていたこれらの感情を外に出し、感じてケアしていくことが大切です。

心を大切にしている女性

●過去と現在のつながりを捉える

記憶と感情のセットが、現在の自分に影響を及ぼしていることがあります。例えば、私の場合、体の大きい男性が突然近づく、大声で怒鳴るといった出来事に対して、体が凍りついて動けなくなる感覚が起こります。また、家族の中で「自分がいい子でいないと家族が壊れてしまう」と思っていたため、常に空気を読んだり、その場にいる人の機嫌を取ろうとしたり、自分を押し殺して周囲に尽くすクセがついてしまいました。このため、人といると疲れてしまったり、空気を読んだつもりが逆に人間関係に悪影響を及ぼしたり、「素の自分でいられない、素の自分を出したら嫌われる」と感じて苦しくなることがあります。このように、過去の痛みが今の生きづらさに影響しているという構図を客観的に捉えられるようになることが大切です。


●「信念体系」を見つめ直す

私たちが過去の痛みから得た経験は、やがて「ありのままの私を出したら嫌われる」「私には生きる価値がない」「私は何をやってもうまくいかない」「私は見捨てられる存在だ」「人はどうせ裏切る」といった形で、私たち自身の中に根付いていくことがあります。こうした考え方の根底を、心理学の領域では「信念体系」や「スキーマ」「自動思考」などと呼ぶことがあります(これらの用語には厳密な定義の違いがあるため、一概に同じものとして扱うことはできません)。多くの研究から、トラウマが私たちの思考パターンや信念体系に影響を与えることがわかっています。


トラウマケアでは、こうした信念体系をゆっくりと見つめ直し、その中で現在の生きづらさにつながっている部分を少しずつ手放したり、新たな視点を取り入れていくことがあります。なお、これは必ずしも「信念体系を変える」ことだけを目指すのではなく、自分の中にある信念に気づくことで、それ自体が変化のきっかけとなることも多いのです。


例:「私がいい人でいれば、みんなが好きになってくれる」→「私は他の人の世話をしなかったとしても、好かれる人間だ」(「子どもを生きればおとなになれる」クラウディア・ブラック著より)


●感情表現や行動に関する新しいスキルの獲得

相手を尊重しながら、自分の主張を伝えるコミュニケーションの方法や、境界線を保ったコミュニケーションなど、さまざまなスキルを学びます。これにより、新しい信念体系を行動に移しやすくなります。


●変えられないものを認める

「変える」ことだけに注目しがちですが、私たちの中には変えられないもの、変わらないものも存在します。トラウマに翻弄されている時は、変えられない自分や相手、状況を無理に変えようとしてしまい、余計につらくなることもあります。変えられないものをそのまま認めていくことも、とても大切なことです。


心を大切にしている女性

 

 トラウマは必ずしも完全に消えるものではなく、その感じ方や捉え方が変わっていくとされています。以前はトゲトゲしていたものが、形を変えたり、自分の中での存在が共存しやすくなったり、そうした変化があるとされています。トラウマケアは螺旋階段のように、同じところをぐるぐる回りながら、気付いたら「少しずつ上がってきたな」と感じるものだとも言われています。

 

 トラウマは自分が生き抜くために生まれた自分の一部分ですので、戦うとか、消すのではなく、「どうすればより良く共にいられるか」を探すこともケアの一部です。無理に解消を目指すと、かえって良くない方向に行ってしまう気もします。自分の一部を無理に消そうとすると、きっと自分自身が反発するからです。トラウマケアは、トラウマと自分がどう共存していくかを探る道筋のようなものだと感じています。


 自助グループで使われているニーバーの祈りは、いつも本当にその言葉の深さを感じます。ACOA大阪でも最後に唱和しています。


神様、お与えください、

自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、

変えられるものを変えていく勇気を、

そしてその二つを見分ける賢さを。

(ラインホールド・ニーバーの祈り)



 トラウマやこころのセルフケアについてもっと詳しく学んでみたいと思われる方は、ぜひこころのケア講座で一緒に学んでいきましょう。ご要望に応じた開催もしておりますので、お問い合わせ下さい。



注意: 具体的なトラウマケアについては、個別の状況に応じて専門家に相談されることをお勧めいたします。

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