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執筆者の写真kumada rie

健保組合の方々へ在宅医療の講演

7月29日はめずらしく、講演にラジオ出演と、一般の方向けに話す予定の立て込んだ日でした。 午後は都内で、健保組合の事務局の方々の集まる勉強会で、講師をさせて頂きました。こちらでの講師は2回目。前回は「救児の人々」について話させて頂きました。 今回のテーマは、在宅医療。

この会には、誰もが聞いたことのある大手企業の健保組合もおられれば、業種ごとの組合もおられます。健保の方々の最大の関心事は、メンタルヘルス、 特に「うつ」への対応でしょう。しかし、そこは専門家に任せればいいと思いましたので、私が話せることを、と思って在宅医療にしました。 なぜ在宅医療かというと、国の政策決定のやり方、考え方を知るのに一番分かりやすい素材だと思ったからです。国は2012年を「『新生在宅医療・介護元年』として立ち上げたい」「予算、診療報酬、地域医療計画など、行政の手法を総動員して取り組みを進める」(当時の大谷泰夫厚生労働省医政局長)と言い、実に”あの手この手”を使って、在宅医療を推進しました。 講 演では、その「あの手この手」とは一体何なのかということを話しました。それを聞けば、行政のやり口が大体分かるからです。彼らの行動原理が何で、どう動 こうとするのか、そのために周囲をどう動かすのか。それを知っていることは、マクロで医療制度や政策を考える時には、参考になると思います。もちろん授業で聞くような建前論なんかではありません。まあ厚労省の役人も人間だよね、というところでしょうか。 しかし、在宅医療の進まない現実。人手不足、委縮医療、訴訟、法律の未整備、患者家族の意識、医療連携の未整備、介護保険、認知症医療の貧困などについて説明。 厚労省も少しトーンを変え始め、各省の期待を背負った住宅政策が推進されていると言いました。 なぜ在宅医療が進まないのかというと、厚労省は、医療提供体制を変えても国民のメンタリティには影響しないということ理解していないからでしょう。これまで厚労省は、病院や診療所の診療報酬や予算を動かすことで、医療提供体制を変えてきました。病院や診療所は患者にとっては非日常の場所ですから、そこに行ったら従います。病院や診療所の動きを変えれば、患者の動きも変えることができていました。動かしやすい病院や診療所は、厚労省にとっていわば”ホーム”です。 しかし、在宅医療の行われる場は、患者の生活の場。そこには非営利の事業も入ってくるし、医療だけでなく様々な要素が入ってきています。厚労省からすれば、”アウェー”なわけです。そこに、これまで病院の診療報酬を変えたら患者の行動も変わる、と同じような考え方で進めていっても、まあそんな簡単に行くわけがありません。生身の人間が生きている現場というのは、生易しいものではありません。ちょっとやそっと、医療制度をいじったぐらいで、簡単に在宅医療の体制が整ったりするわけはないのです。 その証拠に、びっくりするような問題があちこちで起きています。講演では3つほどお伝えしました。 しかし厚労省は着々と進めていきますから、問題が起こったとしてもその都度いなしながら、思うようにやっています。 最後におまけとして、社会保障制度改革国民会議について一般メディアが取り上げない話を提供。権丈善一委員と増田寛也委員の出した「新型医療法人」について触れました。医療法人が主体的に「ホールディングカンパニー」になって交通や商業などをつくっていこうという話は、今後の医療提供体制に大きな波紋を投げかけると思います。   そんな話を80分ぐらいさせて頂きました。終了後には参考になった、面白かったという感想を頂いたので、よかった! と思いました。 終了後は品川方面に向かいました。今月から昭和大学医学部の救急医学講座の客員講師にさせて頂き、初めて医局スタッフの方々に御挨拶させて頂くことになっていたのです。その後はラジオ。本当にバタバタした日でした。

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