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新興宗教に入ってしまった私の体験記ー 孤独につけ込む搾取の構造

執筆者の写真: kumada riekumada rie

最近、信憑性のない民間療法や陰謀論などに巻き込まれて搾取された方々の記事を読む機会がありました。その方々の気持ちが少し分かるような気がして、恥ずかしい過去ではありますが、私自身の経験を共有させていただこうと思います。


私は20代の頃、新興宗教にハマってしまった時期がありました。上京して就職したばかりで、気軽に話せる友達が近くに全くいない状況でした。小規模な会社で、同期も年上のキャリア入社の方が一人いただけ。土地勘のない地域で初めての社会人生活を送る中で、毎日が不安でいっぱいでした。


そんな時、あるセミナーで隣に座った女性に話しかけられたことがきっかけで、気づけば新興宗教に入っていました。今思えば典型的な勧誘だったのですが、当時の私は簡単に引き込まれてしまいました。


なぜ勧誘に応じてしまったのか、今なら理由が分かります。


・私の話を丁寧に聞いて肯定してくれたこと

・居場所があったこと


この二つが、私にとってかけがえのないものだったのです。


当時の私は深い孤独の中にいて、摂食障害や自傷行為によって日々を生き延びている状況でした。職場の方々は皆優しく、良い方ばかりでしたが、機能不全家族で育った私は自信がなく、「この世で生きている価値がない」「私はポンコツだ」という思いを常に抱えていました。そのため、うまく会話ができず、人間関係を築くのも苦手でした。


そんな私に、宗教の人たちは丁寧に耳を傾けてくれました。嬉しかったし、安心できました。「私はここにいていいんだ」という感覚を得られたのです。また、「私たちがこの世を救う」という考え方も、当時の私は心地よく感じてしまいました。


否定され続けて育った人間にとって、「あなたは特別だ、選ばれた人間だ」というメッセージは、まるで麻薬のように心に染みわたります。いつも「今の自分ではない何者か」になりたいと願っていた私にとって、そんな言葉は救いのように感じられました。人とのつながりや居場所まで与えられ、私は自分に価値があると感じられるようになりました。


しかし、時が経つにつれて団体の振る舞いに違和感を覚え、彼らの言葉に嘘が含まれていることにも気づきました。最後は「自分を受け入れてくれた人を信じたい」という気持ちだけで繋がっていたように思います。結局、金銭的な搾取に気づいて離れることになりました。


当時を振り返ると、私のような人たちがたくさんいました。皆、何らかの形で家庭に問題を抱えていたり、居場所がなかったり、生きづらさを感じていた人たちでした。それでも必死にサバイバルを続けてきた人たちばかりだったと思います。


「今の自分ではない特別な自分」を求めて私は必死でしたが、本当に求めていたものは自分の中にあったのだと気づいたのは、トラウマケアを始めて数年経ってからでした。自分を嫌う気持ち、否定する気持ち、見たくない自分の中の暗い部分と何度も向き合う中で、私の中にある強さや逞しさにも気づくことができました。他人から「特別」と認めてもらう必要などなく、生まれてきた時点で私を含めた誰もが、素晴らしいかけがえのない存在だったのだということも、今ならよく分かります。(トラウマケアについては、安全な環境で専門家のサポートを受けながら進めていくことをお勧めします


マルチ商法や陰謀論、新興宗教、怪しい民間療法、今ならSNSを使った勧誘、投資詐欺など、「なぜそんなものにハマるのか」と思う方も多いでしょう。しかし、以前ブログに書いたように、本人にとっては依存する対象は何でもよく、たまたまそれだっただけかもしれません。むしろなぜそれに依存するのか、その背景に目を向けることが大切だと、私は思います。(もちろん人によって置かれた状況や背景は様々なので、陥る心理は一概に言えることではないとも思っています)

宗教の勧誘

そんな過去を持つ私は、何かにハマって搾取された方の話を聞くと、「分からなくもないな…」と思ってしまいます。様々な形で人を搾取するツールが存在する社会を怖くも感じますが、どんなものでも、根本には人の孤独や寂しさ、不安につけ込むという共通点があるように思います。


私が自助グループの運営を続けることには、孤独・孤立している人たちのつながりを作りたいという思いがあります。社会や家庭や地域で立場や役割を持っていても、孤独な人はたくさんいると思います。自助グループでは、そういったしがらみから離れ、一人の人同士としてつながることのできる場をつくりたいと思っています。


自助グループでは、特定の考えや価値観を押し付けることはありません。それぞれの方が自分の人生を自分で選択していけるよう、ただその歩みに寄り添う場でありたいと思っています。このような場づくりを、これからも大切に続けていきたいと思います。

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