イメージワークができない時の対処法ー無理なく心をケアするために
- kumada rie
- 10月6日
- 読了時間: 5分
前回のブログで、過去の傷ついた自分を癒すイメージワークをご紹介させていただきました。このワークについて、トラウマケア講座のご参加者の方から「過去の自分を想像することがうまくいかない」というお声をいただきました。ご質問をくださった方が次回の講座にご参加くださるか分からないので、こちらで回答させていただこうと思います。
そのように感じられることは、決して珍しいことではないです。ブログを読んでくださっている方の中にも、同じように感じている方がいらっしゃるかもしれません。
まず、イメージワークがうまくいかなくても決してご自身を責めないでほしいのです。イメージするのが難しいと感じる時、それは心が「まだ、その準備ができていないよ」と、私たちに優しく教えてくれているサインなのかもしれません。あるいは、つらい記憶から私たち自身を守るために、心がごく自然に、そうさせてくれている可能性も考えられます。これは、私たちの心が持つ、とても大切な防御機能の一つと言われています。
無理にイメージしようとすることで、かえって心が疲れてしまうこともあります。一番大切なのは、私たち自身の心の声を大切にして、決して無理をしないことです。
今日は、イメージワークが難しいと感じる時に、代わりに試してみることができるかもしれない、いくつかの方法についてお伝えできたらと思います。ご自身の感覚に合うもの、少しでも「これならできそうかな」と感じるものがあれば、選択肢の一つとして、心に留めておいていただけたら嬉しいです。
イメージ以外の方法で、心をケアしてみる
自分を癒す方法は色々あります。五感を使ったり、少し視点を変えたりすることで、心がふと落ち着くこともあります。選択肢の一つとして眺めていただければと思います。
1.「今、ここ」の感覚を大切にしてみる
「今、ここ」にある安心できる感覚に、そっと意識を向けてみるのも一つの方法です。
例えば、
温かい飲み物を、両手で包み込んで、その温もりをゆっくりと感じながら味わってみる
好きな香りのアロマを焚いたり、お気に入りのハンドクリームを手のひらに広げて、丁寧に塗ってみたりする
肌触りの良い毛布やクッションに、優しく触れて、その柔らかさを感じてみる
心地よいと感じる音楽に、静かに耳を澄ませて、音の一つ一つに意識を向けてみる
これは、トラウマケアで「グラウンディング」と呼ばれる手法にも通じるものがあると言われています。意識を「今」に戻すことで、心が少しずつ落ち着いていくのを感じられるかもしれません。

2.「安全な場所」を心の中に作ってみる
「過去の自分を助けに行く」というイメージが難しい時は、まず「自分が心から安心できる場所」を思い浮かべてみることから始めてみるのもいいかもしれません。
実際に存在する場所でも、空想の中の場所でも、どちらでも大丈夫です。たとえば、日当たりの良いあたたかなお部屋、静かな図書館の落ち着ける片隅、穏やかな海辺など。
自分にとって心地よさそうな場所が心に浮かんできたら、そこにいる今の自分を想像してみます。ゆっくりと、その場所の心地よさを味わってみるのも良い方法です。
この「安全な場所」は、いつでも心の中で訪れることができる、あなただけの特別な場所になります。
3.心に浮かんだ言葉を書き出してみる
イメージする代わりに、今の気持ちや、もし言葉をかけられるとしたら過去の自分にどんな言葉をかけてあげたいかを、紙に書き出してみることもできます。
「がんばった」「つらかった」「大丈夫」など、心に浮かんだ言葉をそのまま書き出すだけでも気持ちが整理されたり、少し楽になったりすることがあります。
書くことが難しい時は、「今日もよくがんばったね」「大変だったね」など、自分自身への労いの言葉を、心の中でそっとつぶやいてみるのも十分なセルフケアになります。

4.体を動かしてみる
じっとしているよりも、体を少し動かすことで心が落ち着くこともあります。ゆっくりストレッチ、深呼吸をしながら肩を回す、好きな音楽に合わせて軽く体を揺らす、近所の散歩など。ご自身が心地よいと感じる程度の動きで十分です。
5.つながりを感じる
もし、安心して話せる人がいるのなら、「イメージがうまくできない」という、その気持ち自体を話してみるのも一つかもしれません。イメージワークに関することでなくても、今の正直な気持ちを誰かと分かち合えることは、心の安心と安全につながります。話さなくても、安心できる人のそばにいるだけでも、温かい気持ちになれることがあります。
それぞれのペースを大切に
今回お話しした方法は、あくまで提案の一つです。選択肢の一つとして頭の隅に留めておいていただければ有り難いですが、合わなさそうなら他にご自身にとって心地よいものを選んでいただければと思います。私たちにとって、自分のために穏やかな時間をつくろうとすること、それ自体が何よりのセルフケアになると感じています。
ワークをご紹介するときは、ワークを完遂することが目標ではないことをお伝えしています。ワークは私たちが自分の心と向き合う時のツールで、向き合っている途中に何か「うまくいかない」「違和感がある」と感じたら、それは体とこころがサインを出してくれているということだと思っています。そのサインを大事にしていくと、より一層自分の体やこころと付き合いやすくなるような気がしています。
その意味で、ワークは自分の心と向き合う手掛かりのようなもの、と考えていただく方が向き合いやすいかもしれない、とも思います。
専門家のサポートという選択肢
そして、もし苦しい気持ちが長く続くようであれば、カウンセラーやセラピストなどの専門家の力を借りることも、私たち自身を大切にするための、とても重要な選択肢の一つです。
専門家と一緒なら、イメージワークが難しい理由を安全に探ったり、あなたに合った別の方法を見つけたりすることができるかもしれません。どうか一人で抱え込まず、必要な時にはサポートを求めることを考えていただきたいと思います。それも、自分と向き合うセルフケアにつながっていることだと思います。
トラウマケアについてお伝えするこころのケア講座の後編が11月から始まります。ぜひみなさまのご参加をお待ちしております!



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