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感情をセルフケアできる新しい方法ーキャパシターボディワーク研修レポート

  • 執筆者の写真: kumada rie
    kumada rie
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

この連休は、感情のケアをボディワークで行う「キャパシター」プログラムの研修に参加してきました。


体にアプローチするトラウマケア

日本ではまだあまり知られていませんが、体にアプローチすることで、自分自身の付き合いづらい感情(怒り、悲しみ、不安、パニック、自己否定感など)やトラウマをケアすることができます。

北米では90年代からこうした研究報告が上がるようになり、有名なところでは以下のような手法が広がっています:

  • EMDR:眼球運動を使ってトラウマ記憶を処理する心理療法

  • ソマティックエクスペリエンシング:身体感覚に注目してトラウマを解放する技法

 特にポリヴェーガル理論(自律神経系の働きを説明する理論)の登場により、トラウマ研究は一気に進歩しました。しかし日本では、トラウマケアについてはまだまだ発展途上というのが現状です。


キャパシターとは

キャパシターは、呼吸法やタッピングなど誰にでも簡単にできる技術でトラウマをケアできる画期的なプログラムです。アメリカ・カリフォルニアに拠点を置く国際NGO「キャパシター・インターナショナルが約40年にわたり世界47か国で展開してきました。キャパシターとは、スペイン語で「命を引き出す」という意味です。1988年内戦終後のニカラグアで傷ついた人々が、貧困、依存、暴力、トラウマ的なストレスに対処する中で、簡単なマッサージや体操などで、こころとからだの健康を自分自身で保つシンプルな方法を分かち合ったことから始まったそうです。


公式キャパシターインターナショナルHPからの画像
画像はキャパシター・インターナショナル(https://capacitar.org/)から

実績は書き切れませんが、私が見聞きしただけでも…。

  • イスラエルやアフリカなど紛争地、自然災害の被災地など世界47か国で約40年間実施

  • 査読付き学術論文に効果が掲載されている、科学的根拠のあるプログラム

  • アメリカでは複数の医療機関が導入し、患者の不安や疼痛軽減、血圧管理、抑うつ症状のケアに活用

  • 多くの学校で子どもの感情ケア教育プログラムとして実施

  • 攻撃的行動が出る自閉症児の7割に効果があったという論文報告も

  • 提供しているプログラムの多くをHP上で動画で無料公開、コロナ禍ではセルフケアツールを各国言語に翻訳してPDFで無料提供。

  • カナダ政府や南アフリカ政府、国連機関(IOM)とも連携


日本では、東日本大震災の被災地石巻市、能登半島地震の被災地珠洲市・能都町などでもキャパシタープログラムが提供され、継続的なケアが行われています。東京でも精神科病院の医療現場、学校教育、女性支援活動の現場など、様々な場面で活用されています。


私がキャパシターを探していた理由

私は以前から「手軽で低コストでできるトラウマケア」を探していました。

日本でもトラウマケアにはカウンセリングがあり、EMDRやソマティックを受けられるところも増えてきましたが、敷居も高く、何より高額です。カウンセリングも自費では6,000円〜1万円超/1時間というところが多く、EMDRやソマティックを受けられる場所もまだ限定的です。予約を取って電車に乗って通うという労力も必要になります。

トラウマを抱えている人は経済的に厳しい状況の方も多く、どんな人でもハードル低く、気軽にできるトラウマケアが必要だと感じていました(ラ〇ザップにチョ〇ザップがあるみたいに…)。


また、自助グループを運営する中で「言葉に頼らないケア手法」の必要性も感じていました。カウンセリングや自助グループでの言葉を使うケアは効果的ですが、言語化が難しい人や、トラウマを受けて間もない時期には適さない場合もあります。


キャパシターとの出会い

そんな時に出会ったキャパシターの特徴は、まさに私が求めていたものでした。

キャパシターの特徴:

  • 子どもから高齢者、妊婦さんまで誰でも実践可能

  • 簡単な呼吸法やタッピングなどのボディワーク

  • 特別な道具は一切不要

  • 集団で受講でき、費用も安価

  • 短時間で習得可能

  • 資格や認定制度がない(受けた人が他の人に伝えてもいい)


創始者のパトリシア・マティス・ケイン博士は、約40年にわたり紛争地域や被災地で、日々の生活が不安定な状況に置かれた方々にキャパシタープログラムを提供されてきました。博士は「紛争地や被災地で誰もがカウンセリングを受けることは現実的に困難。より多くの人に手軽にケアを届けていきたい」という趣旨のことをお話しされていたそうです。

またキャパシターの考え方で素晴らしいところが、「自分が受けてよかったと思ったら、家族や地域の人など誰にでも伝えてよい」という「民衆教育」の考え方を取り入れているところです。多くのケア技法が研修に時間を要したり、認定を受けた人しか指導できなかったりしますが、キャパシターは受けた人が伝えていけるのです。この民衆教育理論(パウロ・フレイレが提唱)は多くの国際NGOが取り入れており、地域のエンパワメントや持続可能性につながるとして、国連機関やセーブ・ザ・チルドレンもこの手法により教育を行っています。


実際に体験してみて

キャパシター・インターナショナル・ジャパンが毎月開催している無料のオンライン練習会に参加しました。自分で扱うのがつらい感情、例えば苦しさ、怒り、悲しみ、恐怖感、不安感などを軽減できることを体感しました。自助グループの仲間たちにも紹介したところ、彼女たちからも効果を感じるという声をもらっています。


研修で学んだこと

この手法をトラウマケア講座にも取り入れたいと思い、毎月の練習会に通い、この連休に研修を受講しました。研修内容は素晴らしく、様々なボディワークを学ぶとともに、「なぜこの方法が感情をケアできるのか」という理論的背景についても深く理解することができました。参加者も看護師、子育てNPO支援者、教育関係者など多様で、皆さん自分自身のケアや日々の仕事で活かしていくために学んでおられました。

改めて、簡易で道具不要、しかも安価という、本当に素晴らしい手法だと確信しました。





今後の予定

現在、11月に大阪でキャパシターのイベントを開催できるよう準備を進めています。準備が整い次第、皆さまにお知らせいたします。

また、ACOA大阪のトラウマケア講座でもキャパシターを取り入れていく予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちください!


イグナチオ教会
有名なイグナチオ教会での研修会開催でした!












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